愛さずにいられない馬鹿もいる
「I Love You, 答えてくれ」 [オフィシャルサイト:でじなみ]
2007年10月3日発売となりました、35枚目となるオリジナルアルバム。
収録 全11曲
ある意味、之までに無い程「濃厚」。
中島みゆき
「I Love You, 答えてくれ」
楽天ブックス
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
YCCW-10037
ASIN: B000UVXINK
※タイトル題字:三代目魚武濱田成夫
前作「ララバイSINGER」2006年11月発売は、
「原点に立ち返り、中島みゆき自身の中にあり、またファンが求める“中島みゆきの王道”」とのふれ込み通り、それはまさしく多くの人が納得する"中島みゆきのアルバム"と言って良い仕上がりでした。
そして今回の「I Love You, 答えてくれ」は、"ロック"だという。
NAKAJIMA MIYUKI OFFICIAL SITEそれはサウンドがどうとか、ビートがどうとかではなくて、またいわゆる「御乱心の時代」*あたりで自らのサウンドを模索していた頃の音楽とは違い、心の底から湧き上がるものを余計な飾りなど無しに、真っ向勝負、正面からぶつかって来る心。
流行や時代性に左右される事のない、普遍性のある、自然体の中から溢れ出てくる人間の根本を、ロックという表現で、ソリッドかつストレートに表現した作品
*(1984「はじめまして」~1985「miss M.」~1986「36.5℃」~1988「中島みゆき」、
「御乱心の時代」とは本人の言葉ではあるが、具体的な時期については明らかにされておらず諸説有り)
自分語りの叫びではなく、もっと普遍的な、人間の根底にあるような狡さや貧しさや儚さ、そして弱さを暴き出し、そうして暴いてからのち尚かつ包み込むような、底のない程の懐の深さがある。
「ララバイ SINGER」と比べると両極にあるように見えるものの、これも"まさしく中島みゆき"だと思う。
いわゆるロックと聞いて連想される拳を突き上げるような曲は、ともすれば聴き手にもパワーが無くてはついて行くことが出来ず疲れている時になどは聴くのが辛いことも少なくないけれど、彼女のロックは戦いに疲れ倒れそうな人に、手を差し伸べる歌だと思う。
しかしそれは決して優しく抱き起こすようなものではなく、力の入らない手を無理に取って引き起こすような強引なやり方かも知れない。
けれどもその彼女の力強さが、今にも折れそうな心に響く。
発売前にオンエアされたラジオでのインタビュー(田家秀樹 NACK 5, 2007/9/22) では
「ララバイSINGER」でおやすみなさいませと(略)、、、今度の「I Love You, 答えてくれ」ではのっけから”起きて働け!”という感じと笑い飛ばし、また今回は「愛のアルバム」としている。
アルバムの中でも特にロック色の強い曲
「サバイバル・ロード」
「ボディ・トーク」
「I Love You, 答えてくれ」
この3曲はやはり圧倒される。
リズムセクションのハードビートも強いが、それ以上に強い詩と彼女の歌。
油断していると心を鷲掴みにされて、つい、涙がこぼれてしまう。
前出のラジオのインタビューで語るところによると、今度のアルバムの柱になる曲が「ボディ・トーク」だという。
その「ボディ・トーク」では、今まで言葉に拘ってきた人が、こう歌う。
言葉なんて 迫力がない 言葉なんて なんて弱いんだろう
言葉なんて 迫力がない 言葉はなんて なんて弱いんだろう
そこに彼女の凄まじい程の深さを見てしまうような気が、私にはする。
時間も空間も全部取っ払って、一段と近く、一層遠い存在になったようにさえ思えてしまう。
「I Love You, 答えてくれ」
・・・私が答えることが出来るとしたら、やはりこう答えたい。
『同じ時代に生まれて嬉しい』