えー、大阪公演も終わったことですので、気軽にネタバレ出来ますね。
まあ終了したので「ネタバレ」って言い方はちょっと違う感じですけど。
そう言えば16日ですね、という事は、来週はアレですよ、アレです。
それは恐ろしい? D700の高感度
じゃあ前回に続いて、また謎解き?と行きたいところなのですが、謎を解くというよりも概要の把握と整理になってますね。
▽ 第1幕 前編 ▽
♪"1.十二天"
バイオリンのインスト。
昨年のツアーサポートもされた牛山玲奈さんの弾く十二天です。
これが実に舞台上の雰囲気と相まって、とても心地よく、不思議と郷愁を誘います。
通常バイオリンで弾く旋律よりも低い音、どちらかというとこの音程で旋律を弾くならチェロの方かと思いますが、その低めの音をとても柔らかに、優しく弾いてくれます。
是非もう一度聴きたいと思わせてくれる音色でした。
♪"2.暦売りの歌"
十二天から暦売りの歌に。そのメロディにのって中央階段下手側から、行李を背負った中島みゆき嬢が上ってきます。
舞台中央の階段、幅およそ二間ほど?
階段の裾はオーケストラピットになるのですが、オケピ自体はその階段で隠れ、両サイドの高欄下に部分的に見えています。(覗き込めば見えます。ちなみに隠れっぱなしはコーラスとベース?)
♪"3. 百九番目の除夜の鐘"
今回のメインとなる曲ですね。
合わせて5回使われていますが、印象としてはこれが頭の中で渦を巻くくらい流れています。
煩悩があるからこそ「人」だとも言えると思いますが、108つの煩悩、これをはみ出して109番目、ですね。
これは難しい。簡単に結論は出せないかな。
そもそも煩悩と関係有る話しなのかしら。具体的な何かではなく、鳴らないはずの鐘が鳴る、という事で普通ではない状況を表しているという理解でよいのかな。
♪"4. 夜をくだされ"
山寺の庵主こと姥竹、香坂千晶さんの歌う曲目です。
この庵主は姥竹なのですが、庵主が安寿に掛かっている(パンフレットを開くとすぐに気付く)ので、尚更この配役を難解に仕立てるカラクリとなっています。
♪"5. 海に絵を描く"
「元・画家のホームレス」ことコビヤマ洋一氏登場。「縁切り寺」の「縁の下」に潜り込み、このパートを歌います。
"海に絵を描く絵の具は涙 約束事はその場限り ??? 嘘と同じ事になる??? "と。
どうやらこの元・画家、自分の意思とは裏腹に、手が勝手に筆を執り絵を描こうとしている模様。そして、暦売りに「私は誰ですか」と問いかけます。名前を忘れたことは覚えている?何か約束をしたが思い出せない模様。記憶喪失?
ここでしたか、暦売りが「わ・す・れ・ぐ・さ」と呼びかけます。という事はこの元・画家のホームレスは「萱草=厨子王」なのでありますが、なぜ暦売りにそれが分かる?
(※これの謎解きはちょっと後に回しましょう)
暦売りに名前を売ってくれと詰め寄りますと暦を売りつけられそうになりますが、その暦、なんと「いちまんえん」とのことにて、「高え!」(→たけえ!→たけー!→竹ー!)と叫びますと、暦売りが「あー、呼んじゃったぁ」「名前を呼ぶと、出るんです♪」と。そこですかさず、「はぁ~い~」と庵主=姥竹が登場し、これで即ち、パンフレット見ずとも庵主=たけ=姥竹、の種明かしとなりまして、暫し追い掛けっこの段となり、次の曲へ続きます。
↓
♪"6. 旅支度なされませ"
逃げる元・画家のホームレスをつかまえて何かと世話を焼こうとする庵主です。何故そこまで世話焼きなのかというと、厨子王と姥竹の関係だから、という事なのでしょう。
♪"7. 私の罪は水の底"
二人が追い駆けっこをしている間、暦売りは再び寺に潜り込み、今度は「柄杓」を持ち出してきます。
どう隠して持ち去ろうかと思案しているところへ、走って逃げてきた元・画家がぶつかり、その拍子に柄杓は上手側の滝壺?へ落ちてしまいます。
(この辺りの詳細、既に記憶が遠のいてきております)
♪"8. 逃げよ、少年"
怒る暦売り。手を振り回して追い掛ける。
もちろん"逃げよ"とは、追っ手を振り切って都へと逃げる厨子王に対してのことでしょう。
♪"9. 百九番目の除夜の鐘"
この曲が鳴ると、時空が歪んで混乱するようです。
"出る"切っ掛け?
そしてその合図で、赤い着物を着た裸足の禿童("ハゲ"ではなくて"かむろ"=おかっぱ頭の女童)がそろりと登場。これが土居美佐子さんですね。
水底に落ちた柄杓を見つけて拾い上げ、暦売りの荷物の傍らへ、そっと置きますと、追い掛けるのに疲れ、諦めて凹んでいる暦売りはその柄杓と禿に気付き、驚きます。
この柄杓の意味はもちろん、初めて潮汲みに出た日に杓を波に取られてしまった折、安寿に汲みようを教え姉妹の誓いをした伊勢の小萩との場面を連想させます。観客に安寿の苦労を思い出させ、「そうだ、杓は大切な物」と気付かせる仕組みでしょうか。
♪"10. 愚かな禿(かむろ)"
「賢きお方が 多すぎるので 禿は愚かでおるのが良かろう」
暦売りの様子に気付いたらしく庵主、「禿の髪した、女童がいましたか」「でましたか?」と冷静に問う。
という事はこの禿、幽霊さん?・・・と、暦売りも不審に思ったか着物の裾をめくりますと、足はある。
パンフレットの配役紹介には「脱走した禿」(※"かむろ"ですよ、ハゲではないです、呉々も)となってます。
ja.wikipediaによりますと、禿にもいくつかありますが、ここではおそらく、遊郭などで遊女の世話をしていた女童のことでしょう。
この禿役を演じる土居美佐子さん、夜会ではキャリアな方ですけれど、一言もセリフがありません。
仕草と表情だけで演技をしておりますが、これが結構ツボというか、良い雰囲気を出してます。可愛らしくて、悲しくて、ちょっと怖い。
"脱走した禿"が"逃げた安寿"と言うことなのでしょうか。
森鴎外の山椒大夫では、厨子王を見送った後、入水して果てます。その時の安寿の姿はまさに禿の髪。そしてその何十年後かに転生した、安寿から見ると来生となるのがこの逃げ出した禿(禿から見ると安寿が前生)ということでしょう。
すると同様に、"元・ホームレスの画家"は、都を目指して寺へ逃げ込み匿われ、関白師実に会うまでまた寺へ宿を借りて過ごした厨子王、と言うことで符合します。
でもちょっとやはり、「画家」が何の意味を秘めているのか、また姥竹がなぜ庵主なのか、という所が引っかかりますけど、、、
そうそう、どの場(曲)でしたでしょうか、禿が暦売りの後ろから口だけ動かして「あそぼ」?と誘うシーンがあります。取り立てて何か深い意味を持たせたとも思えませんが、とても印象に残る場面でした。
長くなるので続きはまた次回