NINE DIRTS AND SNOW WHITE FLICKERS
8月6日発売
Bunkamuraオーチャードホール
今更乍ら、8月に発売された鬼束ちひろのライブDVDについて、です。
論評なんて烏滸がましいですから、感想だけ。
以前にも書きましたけれど、ようやく深い闇の中から戻ってきたようで、その完全復活と言われるのが、2008年4月26日のオーチャードホールでのこのステージ"NINE DIRTS AND SNOW WHITE FLICKERS"(彼女らしくタイトルの意味は不明)です。
富樫春生の"ARIA DA CAPO"~ゴルドベルグ変奏曲より~ で始まるステージ。いやーこのピアノ、バッハは決して上手くないですが、セッション向きというか、相当なくせ者です。(もちろん良い意味で!)
前半は9曲目、キャロルキングの"You've got a friend"までこのピアノ伴奏一本で歌います。
続いて、その興味深い歌詞で彼女独特の世界を歌う"Angelina"でチェロが入り、後半はピアノ+ストリングス・カルテットを従えて歌い上げます。
痩せすぎじゃない?と思う以外は、左手を宙に躍らせ、身体を折り曲げて振り絞るように歌う姿など、以前の彼女と変わらないようなステージです。
後半、弦が入ったことによるのでしょうか、前半での不安定さが無くなり、とても伸び伸びとした歌声に変わるような気がします。
特徴でもある高音のハリも良く、12曲目の"僕等 バラ色の日々"では情感のこもった、素晴らしい歌唱となります。
この"僕等 バラ色の日々"ですが、昨年のアルバム「LAS VEGAS」では今一つな感じだったのですが、このライブでは名曲と言って良いパフォーマンスです。何というか、アレンジとミキサーの重要性が如実に表れた曲ですね。
本ステージラストに配されたのは、活動休止直前にリリースされた"私とワルツを"。
この曲もシングルのレコーディング当時より声も出ていて、とても良い仕上がりです。
全体に、緊張感のある良いステージです。
演奏もさることながら驚くのは、アンコールで新曲「蛍」の紹介をした以外はMC無し!?
「というか、あたしが何も言わないから客も何も言わないっていう感じで。
何の耐久戦だろう?って(笑)、途中から思ったけど。
くしゃみしたら殴られるみたいな。そういった感じだったって友達が言ってました」
ROCKIN'ON JAPAN augst 2008 vol.336 インタビュー「鬼束ちひろ、夏の陣」
彼女らしい照れ隠しでしょうか、アンコールも歌い終わり、退場してゆくときのVサインが色んな意味でホッとさせてくれます。
気になったのは"私とワルツを"の後の「アンコール」のかけ声(!?)・・・久々に聞きました(汗
さすがにこれは編集した方が良かったのではないのかしら、、、
ステージ映像としてもまずまずでしょうか。
静かに、淡々と進行してゆくステージを、時にシネスコープサイズ(ビスタ?)のような横長画面を使い見せています。ただ残念なのは、リモートのロボットカメラなのか、カメラが下手、とても下手。
大部分を彼女のアップに費やしているのですけれど、頭ならまだしも歌っている口元が切れたり、顔の半分以上、眼が撮されなかったり・・・マイクを持つ手と口元の"どアップ"が続くなど、少なからずイライラします。歌手がステージで歌っているときの表情ってのは、そりゃもう大切なものだと思うのですけれどね、、、
被写界深度の極端に浅い(おそらくはシフトレンズ?)レンズを使ったりするなど、意欲的な表現を試みるあたり、おそらく若い映像監督さんでしょうか。実際に箱には入れず、このDVDの発売を待っていた人達のためには、もう少し頑張って欲しかったです。
◇セットリスト
DISCOGRAPHY | 鬼束ちひろ official homepageより
[ 本編 ]
01. ARIA DA CAPO (ゴールドベルグ変奏曲より)
02. SUNNY ROSE
03. Cage
04. 流星群
05. infection
06. 眩暈
07. everyhome
08. なごり雪
09. You've got a friend
10. Angelina
11. MAGICAL WORLD
12. 僕等 バラ色の日々
13. いい日旅立ち・西へ
14. Sign
15. 私とワルツを
[ アンコール ]
16. 月光
MC
17. 蛍