さて、発売日である。
鬼束ちひろ "everyhome"
1. everyhome
2. MAGICAL WORLD
3. 秘密
ユニバーサル
ASIN: B000OVLB0S
JAN:4988005471208
鬼束ちひろ UNIVERSAL MUSIC OFFICIAL SITE
Yahoo!ミュージック - ミュージックマガジン - 鬼束ちひろインタビュー及びPV(フルバージョン!)あり。
「聴いてくれる人はもういないんじゃないかと思った」
ピアノと歌だけのシンプルな構成によるタイトル曲を含む全3曲は、彼女ならではの強烈な個性と迫力を感じさせる内容。
小林武史をプロデューサーに迎えおよそ3年ぶりのシングルである。
イントロから響く単調とも受け取られかねないピアノの旋律は、一瞬"infection"や"茨の海"を連想させるが、この"everyhome"にはそれ程「闇」を背負ってはいない。
よく言えば肩の力が抜けた、或いは憑きものが落ちた(彼女の場合には少々リアルすぎる表現かも知れないけれど)と言っても良いかも知れない。
インタビューの中でも語っているが、以前の彼女は自信の内面からわき上がる物を昇華させるためにぶつけていた、ある種「救いを求める叫び声」であったのが、今度の曲は自分以外の誰かに向けて訴えるような力強さを感じる。
2曲目の"MAGICAL WORLD"は尚更その傾向が強い。
■『everyhome』の歌詞で「夢が醒めない事をきっと責め続けたのだろう」というフレーズがありますが、これは鬼束さん自身のことを歌っているんでしょうか?
鬼束:私自身のことというわけではないです。世の中には大人になりきれない人が多いと思って、でもそれを責めなくてもいいのに、という気持ちで書きました。
■隠居生活をしていた鬼束さん自身の状況と重ね合わせて書かれたのかと思いましたが、そういうわけではなく?
鬼束:そうですね、この曲はもっと大きい曲です。私はデビュー当時から自分のことを書いていて、それは変わらないんですけど、ただ『everyhome』は自分も含めて、もっと視野が深く、遠くを見ている感じです。
詩の内容はとても、抽象的である。
闇の中でもだえ苦しみ、聴き手の心臓に掴み掛かり、救いの手を伸ばすような、そんな彼女の姿を求めていた人々には不評かも知れない。
だが"月光"や"infection"のようなセンセーショナルな言葉を求める人達もまた、別に彼女の苦しむ心を覗き見たいと欲しているわけではない。
彼女が映し出す彼女自身の闇に、自分の心の中にある闇の世界をシンクロさせて、きっとあるはずの一条の光を見いだそうとしているのだろう。
だとすればそんな人達にとって今回のeveryhomeは、優しすぎるのかも知れない。
けれどもこのバラードは、間違いなく鬼束ちひろの世界である。
これから先どのような活動を続けて行くのか分からないが、少なくとも以前のようにハイペースで動き回ることは無さそうである。
ゆったりとしかし確実に、相変わらず左手をヒラヒラさせながら、彼女は裸足で帰ってきた。