D200 + DX17-55mmF2.8
しかしこんな風に落ち着いて桜の花を見るのは、
本当に久しぶりのような気がする。
一昨年、歩くことがやっとになってしまったアイツの世話をしながら、
元気になってまた来年こそ一緒に桜を見に行こうと、そう思っていた。
けれどもそれは叶わなくて、結局、小さな白い入れ物に入った、
真っ白になってしまった彼を抱いて、桜吹雪の空を見上げた。
去年はまた、やがて来る筈の春を望みながら、
さあて、どこへ花見に行けるかと、来る季節を待ちながら、
寝たきりのベッドからでも外の世界が見えるように、
安物だけれど、小さな手鏡も買った。
でも、届かぬ思いは春の夢のように淡く消え、
葬儀も済み、諸手続の合間にようやく立ち寄ったいつもの山には、
満開を過ぎた花が、強い春の風に揺れていた。
悲しくて切なくて、思わず涙が流れてくるけれど、
それでも花は迎えてくれる。