子犬の匂いってのがあるんだよね。
クッキーみたいと言った人もいたけれど、少し違うな。
独特の、臭くはなくて、ちょっとイイ匂い。
大きくなってからは次第に匂いもきつくなって、やはり肉食の獣を思わせる匂いになってしまうね。
キミは嫌いだったけれど、シャンプーのあとの匂いが一番好きだった。
ふわふわのシャボンの匂い。
綺麗にしてあげたんだから、そんな風に睨まないで欲しいな。
みんなイイ匂いだって褒めてくれるのに、キミは地面に身体をこすりつけて匂いを消そうとして、、、せっかくのシャンプーも台無し。
歳を取ると人間と同じように体臭がきつくなってきた。
病気が進行していせいもあったんだろうね。
いつの間にか家の中に匂いが染みついてしまった。
寒い冬の日に閉め切ったままの家に帰ってくると、今でもキミの匂いが漂ってくることがあるよ。
臭くて眉をしかめるような匂いのこともあるのに、何故か懐かしい。
そんなことは無いと分かっているのに、思わずキミの定位置に向かって駆け出しそうな、僕がいる。